DV加害者の行動パターンを知る:暴力の3サイクルとその打開策
DV加害者の行動パターンを知る:暴力の3サイクルとその打開策
こんにちは。名古屋市でDV・モラハラ加害者を対象とした更生プログラムサービス「ブエナヴィーダ」の代表です。 今回は、DV加害者の行動パターンについて、特に「暴力の3サイクル」に焦点を当てて解説していきます。 DVの問題は、単発的な暴力行為ではなく、一定のパターンを持って繰り返されることが多いのです。 この行動パターンを理解することは、DVの問題解決に向けた重要な一歩となります。 加害者自身が自分の行動パターンを認識し、被害者がこのサイクルから抜け出す方法を知ることで、健全な関係性を取り戻すことが可能になるのです。 この記事を通じて、DVの本質をより深く理解し、その打開策を見出すヒントを得ていただければ幸いです。暴力の3サイクルとは
「暴力の3サイクル」は、アメリカの心理学者レノア・ウォーカーが提唱した理論です。 この理論によると、DVは以下の3つの段階を周期的に繰り返すとされています。 1. 緊張の蓄積期 2. 爆発期 3. ハネムーン期 これらの段階が順番に現れ、そしてまた最初に戻るという循環を繰り返すのです。 このサイクルを理解することで、DVの予測や防止、そして適切な介入のタイミングを知ることができます。 では、それぞれの段階について詳しく見ていきましょう。1. 緊張の蓄積期
緊張の蓄積期は、表面上は平穏に見えますが、実際には様々なストレスや不満が蓄積していく時期です。 加害者は、些細なことに苛立ちを覚え、言葉による攻撃や軽度の身体的暴力を行うことがあります。 例えば、以下のような行動が見られます。 ・批判や文句が増える ・冷たい態度や無視をする ・些細なことで怒り出す ・威圧的な態度を取る 被害者は、この段階で加害者の機嫌を取ろうとしたり、問題を回避しようとしたりします。 しかし、このような対応は根本的な解決にはならず、むしろ緊張をさらに高めてしまう結果となります。2. 爆発期
爆発期は、蓄積された緊張が一気に噴出する段階です。 身体的暴力や激しい言葉の暴力が起こり、被害者に深刻な危害を加える可能性が最も高い時期です。 具体的には、以下のような行動が見られます。 ・殴る、蹴るなどの身体的暴力 ・物を投げつける、壊す ・激しい罵倒や脅迫 ・性的暴力 この段階では、加害者は自制心を完全に失っており、被害者は強い恐怖と無力感を感じます。 爆発期の暴力は、時として生命の危険さえもたらす可能性があります。3. ハネムーン期
ハネムーン期は、爆発期の後に訪れる比較的平和な時期です。 加害者は自分の行動を反省し、謝罪や優しい態度を示します。 具体的には、以下のような行動が見られます。 ・謝罪を繰り返す ・二度と暴力を振るわないと約束する ・贈り物をする ・優しく接する 被害者は、この段階で加害者が本当に変わったのではないかと期待を抱きます。 しかし、多くの場合、この平和な時期は長くは続かず、再び緊張の蓄積期に入っていきます。 このサイクルが繰り返されることで、被害者は希望と絶望の間で揺れ動き、関係性から抜け出すことが困難になっていきます。なぜ暴力の3サイクルが繰り返されるのか
暴力の3サイクルが繰り返される背景には、複雑な要因が絡み合っています。 ここでは、主な要因について考えてみましょう。1. 加害者の心理的要因
加害者には、以下のような心理的要因が存在することがあります。 ・低い自尊心 ・強い支配欲 ・コミュニケーション能力の不足 ・ストレス耐性の低さ ・暴力的な問題解決方法の学習 これらの要因により、加害者は健全な方法で問題に対処することができず、暴力に頼ってしまうのです。2. 被害者の心理的要因
被害者側にも、サイクルから抜け出すことを困難にする心理的要因があります。 ・学習性無力感 ・経済的依存 ・子どもへの影響の懸念 ・加害者への愛情や同情 ・社会的孤立 これらの要因により、被害者は暴力的な関係性を受け入れてしまったり、関係性から抜け出すことをためらったりしてしまうのです。3. 社会的要因
社会全体の問題も、このサイクルの継続に影響を与えています。 ・DVに対する認識不足 ・ジェンダーの不平等 ・支援体制の不足 ・法的保護の不十分さ これらの社会的要因により、DVの問題が個人や家庭の問題として矮小化され、適切な介入や支援が行われにくくなっています。暴力の3サイクルを打開するには
では、この暴力の3サイクルを打開するためには、どのような対策が必要でしょうか。 加害者、被害者、そして社会それぞれの立場から考えてみましょう。加害者に求められる行動
加害者が取るべき行動として、以下のようなものが挙げられます。 1. 自分の行動パターンを認識する まず、自分がこの暴力の3サイクルに陥っていることを認識することが重要です。 自分の行動を客観的に振り返り、問題点を把握しましょう。 2. 専門的な支援を求める DVの問題は、一人で解決することが困難です。 カウンセリングや加害者更生プログラムなど、専門的な支援を積極的に受けることが大切です。 3. 感情管理のスキルを学ぶ ストレスや怒りの感情をコントロールする方法を学びましょう。 リラックス法やアンガーマネジメントの技術を身につけることで、爆発期を防ぐことができます。 4. コミュニケーション能力を向上させる 健全なコミュニケーション方法を学び、実践することが重要です。 自分の感情や欲求を適切に表現し、相手の気持ちを理解する能力を養いましょう。 5. 価値観の見直し ジェンダーに関する固定観念や、関係性についての考え方を見直すことも必要です。 パートナーとの対等な関係性について、深く考えを巡らせましょう。被害者に必要な支援
被害者が暴力の3サイクルから抜け出すためには、以下のような支援が重要です。 1. 安全の確保 まず最優先されるべきは、被害者の安全です。 緊急時の避難場所や支援機関の連絡先を確認し、必要に応じて警察や専門機関に相談しましょう。 2. 心理的サポート DVは深刻な心理的トラウマを引き起こします。 カウンセリングや支援グループへの参加など、心理的なケアを受けることが大切です。 3. 経済的自立の支援 経済的依存がDVからの脱却を妨げる要因となることがあります。 就労支援や経済的援助など、自立に向けた支援を活用しましょう。 4. 法的支援 必要に応じて、保護命令の申立てや離婚手続きなどの法的措置を取ることも検討しましょう。 弁護士や法テラスなどの専門機関に相談することをおすすめします。 5. 社会的ネットワークの再構築 DVにより失われた社会的つながりを取り戻すことも重要です。 家族や友人との関係を修復したり、新たなコミュニティに参加したりすることで、孤立を防ぎましょう。社会全体で取り組むべき課題
暴力の3サイクルを根本的に解決するためには、社会全体での取り組みが不可欠です。 1. 啓発活動の推進 DVに関する正しい知識を広め、社会全体の認識を高めることが重要です。 学校教育や職場研修、地域の啓発活動などを通じて、DVへの理解を深める機会を増やしていく必要があります。 2. 支援体制の充実 被害者支援や加害者更生のための体制をさらに充実させることが必要です。 相談窓口の増設、専門家の育成、支援プログラムの拡充などに、社会全体で取り組んでいく必要があります。 3. 法制度の整備 DVに関する法制度をさらに整備し、被害者保護と加害者更生を効果的に進められる環境を整えることが重要です。 4. ジェンダー平等の推進 DVの背景には、しばしばジェンダーの不平等があります。 社会全体でジェンダー平等を推進し、固定的な性別役割観を見直していくことが、DVの予防につながります。 5. 早期発見・早期介入の仕組みづくり DVの兆候を早期に発見し、適切に介入できる仕組みを社会全体で構築することが重要です。 学校、職場、地域コミュニティなど、様々な場面でDVの早期発見・早期介入ができるよう、体制を整えていく必要があります。まとめ:暴力の3サイクルを知り、健全な関係性を築く
暴力の3サイクルを理解することは、DVの問題解決に向けた重要な一歩です。 このサイクルは、単に繰り返されるだけでなく、時間とともにエスカレートしていく傾向があります。 そのため、早期の気づきと適切な介入が非常に重要となります。 加害者は自分の行動パターンを認識し、専門的な支援を受けながら変化に向けて努力することが求められます。 被害者は安全を確保し、適切な支援を受けながら、このサイクルから抜け出す勇気を持つことが大切です。 そして社会全体で、DVに対する理解を深め、支援体制を充実させていくことが不可欠です。 DVのない、お互いを尊重し合える関係性は、決して夢物語ではありません。 一人ひとりが暴力の3サイクルを理解し、適切な行動を取ることで、必ず実現できるのです。 私たち「ブエナヴィーダ」は、これからもDV・モラハラの問題に悩む方々に寄り添い、健全な関係性の構築をサポートしていきます。 一人で悩まず、専門家に相談することをおすすめします。 皆さまの幸せな関係づくりを心から応援しています。 #モラハラ #DV加害者 #更生 #ブエナヴィーダ
この記事の著者:
主催者 S.Y
DV加害更生プログラムのプロフェッショナルとして活動している主催者。DVに関する法律、行政の施策について弁護士、自治体等と積極的に情報交換をしている。