“変われた”と思っても油断は禁物
こんにちは。名古屋市でDV加害更生プログラム「Respect Shift」のを提供しています。今回は、「”変われた”と思っても油断は禁物:DVの再発パターンと予防策を探る」というテーマでお話しします。DVやモラハラの問題に取り組み、加害者が自身の行動を改善しようと努力することは、とても重要で価値のあることです。しかし、一度変化を遂げたと感じても、そこで安心してしまうのは危険です。DVには再発のリスクが常にあり、油断すると元の関係性に戻ってしまう可能性があるのです。この記事では、DVの再発パターンとその予防策について詳しく解説していきます。加害者の方々はもちろん、被害者の方々、そして支援者の皆さまにとっても、有益な情報となれば幸いです。
DVの再発リスク:なぜ油断は禁物なのか
DVの問題に取り組み、一定の改善が見られた後でも、再発のリスクは常に存在します。なぜ、油断してはいけないのでしょうか。ここでは、DVの再発リスクについて考えてみましょう。
1. 行動パターンの根深さ
DVの行動パターンは、多くの場合、長年にわたって形成されてきたものです。そのため、短期間で完全に変化することは難しく、ストレスや困難な状況に直面したときに、古い行動パターンに逆戻りしてしまう可能性があります。この根深さを理解し、常に自覚的であることが重要です。
2. ストレス要因の存在
日常生活には、様々なストレス要因が存在します。仕事の問題、経済的な困難、人間関係のトラブルなど、これらのストレスがDVの再発のきっかけとなることがあります。ストレス管理の重要性を認識し、適切に対処する能力を身につける必要があります。
3. 自己認識の甘さ
「もう大丈夫」「完全に変われた」という思い込みは、油断を生み出す危険な要因です。自己認識が甘くなると、小さな兆候を見逃したり、問題行動を正当化したりしてしまう可能性があります。常に自己観察を怠らず、謙虚な姿勢を保つことが大切です。
4. 環境要因の影響
周囲の環境や人間関係も、DVの再発に影響を与える可能性があります。古い友人関係や、DVを容認するような環境に戻ることで、改善された行動が崩れてしまうことがあります。健全な環境を維持し、サポーティブな人間関係を築くことが重要です。
DVの再発パターン:どのような形で現れるのか
DVの再発は、様々な形で現れる可能性があります。ここでは、典型的な再発パターンについて見ていきましょう。
1. ストレス時の攻撃性の再燃
ストレスがたまったときに、以前のような攻撃的な言動が再び現れることがあります。例えば、仕事でのプレッシャーを感じたときに、パートナーに対して怒鳴ったり、物に当たったりするといった行動です。これは、ストレス管理スキルが十分に身についていないことを示唆しています。
2. 控えめな支配欲求の再現
直接的な暴力や明らかな支配行動は避けつつも、より控えめな形で支配欲求が再現することがあります。例えば、「心配だから」と言って、パートナーの行動を細かくチェックするようになるといった具合です。これは、根本的な支配欲求が完全には解消されていないことを示しています。
3. 言葉による攻撃の復活
身体的な暴力は抑制できていても、言葉による攻撃が再び現れることがあります。皮肉や冷やかし、相手を貶める発言など、精神的な暴力が復活する可能性があります。これは、相手の感情を尊重する姿勢が十分に身についていないことを示唆しています。
4. 責任転嫁の再発
問題が起きたときに、再び相手に責任を押し付けるようになることがあります。「お前が〇〇したから」「お前のせいで」といった言葉が増えてくるのです。これは、自己責任の認識が不十分であることを示しています。
5. 過度な謝罪と再発の繰り返し
問題行動の後に過度に謝罪し、その後再び同じ行動を繰り返すというパターンが現れることがあります。これは、真の反省と行動変容が伴っていないことを示しています。
DVの再発を予防するには:具体的な対策
DVの再発を防ぐためには、継続的な努力と適切な対策が必要です。ここでは、具体的な予防策について考えてみましょう。
1. 継続的な自己観察
自分の言動を常に観察し、問題のある行動や考え方がないかチェックする習慣をつけましょう。毎日の振り返りや、定期的な自己評価を行うことが効果的です。例えば、日記をつけたり、行動チェックリストを使ったりするのも良いでしょう。
2. ストレス管理スキルの向上
ストレスを適切に管理する方法を学び、実践することが重要です。瞑想やヨガ、運動など、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。また、ストレスの原因を特定し、根本的な解決策を考える習慣も身につけるとよいでしょう。
3. コミュニケーションスキルの継続的な改善
健全なコミュニケーション方法を学び、日々の生活で実践することが大切です。「わたしメッセージ」の使用、積極的な傾聴、感情の適切な表現方法などを意識的に取り入れましょう。また、定期的にパートナーとの対話の時間を設け、お互いの思いや考えを共有する機会を持つことも効果的です。
4. サポートネットワークの維持
専門家や支援グループとのつながりを維持することが重要です。定期的なカウンセリングや、自助グループへの参加を続けることで、客観的な視点を保ち、問題の早期発見につながります。また、健全な友人関係を築き、ポジティブな影響を受ける環境を作ることも大切です。
5. トリガーの認識と対処法の習得
自分の問題行動のトリガー(引き金)となる状況や感情を特定し、それに対する適切な対処法を学びましょう。例えば、怒りを感じたときのクールダウン方法や、不安を感じたときのリラックス法などです。これらの対処法を事前に準備し、トリガーに遭遇したときに即座に実践できるようにしておくことが大切です。
6. パートナーとの協力関係の構築
パートナーと協力して再発防止に取り組むことが重要です。お互いの変化や成長を認め合い、励まし合える関係を築きましょう。また、問題が起きたときの対処方法をあらかじめ話し合い、共通の理解を持つことも効果的です。
7. 価値観の継続的な見直し
DVの背景にある価値観や信念を継続的に見直し、より健全なものに更新していく努力が必要です。ジェンダーに関する固定観念や、関係性についての考え方などを定期的に振り返り、必要に応じて修正していきましょう。
再発のサインを見逃さない:早期発見と対処
DVの再発を防ぐためには、その兆候を早期に発見し、適切に対処することが重要です。ここでは、再発のサインとその対処法について考えてみましょう。
1. 感情のコントロールの乱れ
イライラや怒りの感情が頻繁に現れるようになったり、感情の波が激しくなったりする場合は要注意です。これは、ストレス管理がうまくいっていない兆候かもしれません。対処法:深呼吸や瞑想などのリラックス法を実践し、感情を落ち着かせましょう。必要に応じて、カウンセリングを受けることも検討してください。
2. コミュニケーションの質の低下
パートナーとの会話が減少したり、会話の内容が表面的になったりする場合は注意が必要です。これは、問題を避けようとする態度や、感情の抑圧の兆候かもしれません。対処法:意識的にパートナーとの対話の時間を設け、お互いの思いや考えを率直に共有する機会を持ちましょう。
3. 小さな支配行動の増加
パートナーの行動を細かくチェックしたり、決定権を独占しようとしたりする傾向が現れた場合は要注意です。これは、支配欲求が再燃している可能性があります。対処法:自分の行動を客観的に観察し、なぜそのような行動をとろうとしているのか、深く考えてみましょう。必要に応じて、専門家に相談することも検討してください。
4. 被害者意識の再燃
「自分は理解されていない」「努力が認められていない」といった被害者意識が強くなる場合は注意が必要です。これは、責任転嫁の前兆かもしれません。対処法:自己中心的な考え方に陥っていないか、自己点検を行いましょう。パートナーの立場に立って考える習慣をつけることも大切です。
5. ストレス解消法の乱れ
これまで効果的だったストレス解消法を怠ったり、不健全なストレス解消法(飲酒や暴食など)に頼ったりするようになった場合は要注意です。これは、ストレス管理能力の低下を示している可能性があります。対処法:健全なストレス解消法を再確認し、日常生活に取り入れる努力をしましょう。新しいストレス解消法を探すのも良いでしょう。
再発後の対応:立ち直りへの道筋
最大限の予防策を講じていても、DVが再発してしまう可能性はゼロではありません。再発してしまった場合、どのように対応すべきでしょうか。ここでは、再発後の立ち直りへの道筋について考えてみましょう。
1. 事実の直視と責任の受容
まず、再発の事実を素直に認め、自分の行動に対する責任を受け入れることが重要です。言い訳や責任転嫁は避け、問題の本質に向き合う勇気を持ちましょう。この誠実な態度が、立ち直りの第一歩となります。
2. 即時の安全確保
再発直後は、まず両者の安全を確保することが最優先です。必要に応じて、一時的な別居や、専門機関のサポートを受けることを検討しましょう。冷静になる時間を持つことで、適切な対応を考えることができます。
3. 専門家への相談
再発の原因を分析し、適切な対策を立てるためには、専門家のサポートが不可欠です。カウンセラーや、DVの専門家に相談し、アドバイスを受けましょう。私たち「ブエナヴィーダ」のような専門機関も、こうした状況でのサポートを提供しています。
4. 再発の要因分析
なぜ再発してしまったのか、その要因を詳細に分析することが重要です。ストレス、環境の変化、未解決の問題など、再発につながった要因を特定し、それぞれに対する対策を考えましょう。
5. 行動計画の見直しと強化
再発の要因分析をもとに、これまでの行動計画を見直し、強化する必要があります。新たな対処法の導入や、既存の方法の改善など、より効果的な再発防止策を考えましょう。専門家のアドバイスを受けながら、具体的で実行可能な計画を立てることが大切です。
6. パートナーとの関係修復
再発によって傷ついたパートナーとの関係を修復することは、非常に重要かつ繊細なプロセスです。誠実な謝罪と、具体的な改善の約束が必要です。ただし、このプロセスは慎重に進める必要があり、専門家のガイダンスを受けることをお勧めします。
7. サポートネットワークの強化
再発を乗り越えるためには、強力なサポートネットワークが必要です。家族や友人、支援グループなど、信頼できる人々との関係を強化しましょう。彼らの支えが、立ち直りの大きな力となります。
8. 自己肯定感の再構築
再発は自己肯定感を大きく揺るがす可能性があります。しかし、これを乗り越える過程で、より強い自己肯定感を築くチャンスでもあります。小さな成功体験を積み重ね、自信を取り戻していく努力が必要です。
9. 継続的な自己成長への取り組み
再発を一時的な後退ではなく、さらなる成長の機会として捉えましょう。新たな学びや気づきを得て、よりよい自分に成長する決意を新たにすることが大切です。
周囲の人々の役割:サポートの重要性
DV加害者の回復と再発防止には、周囲の人々のサポートが非常に重要です。ここでは、家族や友人、支援者など、周囲の人々にできることについて考えてみましょう。
1. 理解と共感の提供
変化しようと努力している人を理解し、その努力を認めることが大切です。批判や非難ではなく、共感的な態度で接することで、前向きな変化を促すことができます。
2. 適切な境界線の設定
サポートを提供しつつも、適切な境界線を設けることが重要です。相手の問題行動を容認したり、過度に介入したりすることは避けましょう。健全な距離感を保ちながら支援することが大切です。
3. 変化の兆候への気づき
再発の兆候に気づいた場合、適切にフィードバックを提供することが重要です。ただし、この際は非難せず、事実に基づいた冷静な指摘を心がけましょう。
4. 専門的支援へのつなぎ役
必要に応じて、専門的な支援につなげる役割を果たすことも大切です。カウンセリングや支援グループなど、適切なリソースの情報を提供し、利用を促すことができます。
5. 安全の確保
再発の危険性が高まった場合、被害者の安全を確保することが最優先です。必要に応じて、避難場所の提供や専門機関への連絡など、具体的な行動を取ることが求められます。
6. 自己ケアの実践
サポートを提供する側も、自身の心身の健康に気を配ることが重要です。過度な負担を避け、必要に応じて専門家のサポートを受けるなど、自己ケアを心がけましょう。
社会全体での取り組み:DVのない社会を目指して
DVの問題を根本的に解決し、再発を防ぐためには、個人や家庭レベルの努力だけでなく、社会全体での取り組みが必要です。ここでは、社会全体でDVのない社会を目指すための方策について考えてみましょう。
1. 教育の充実
学校教育の中で、健全な人間関係やコミュニケーション方法、ジェンダー平等について学ぶ機会を増やすことが重要です。早い段階から、DVに関する正しい知識と予防法を学ぶことで、将来的なDVのリスクを低減することができます。
2. 啓発活動の推進
DVに関する正しい知識や、支援リソースの情報を広く社会に発信することが必要です。メディアやSNSを活用した啓発キャンペーン、地域でのワークショップなど、様々な形での情報発信が求められます。
3. 支援体制の強化
DV被害者への支援はもちろん、加害者の更生を支援する体制も強化する必要があります。相談窓口の増設、専門家の育成、支援プログラムの充実など、包括的な支援体制の構築が求められます。
4. 職場での取り組み
職場でのDV防止研修の実施や、DV被害者への支援制度の整備など、企業レベルでの取り組みも重要です。働く環境での理解と支援が、DVの予防と早期発見につながります。
5. 法制度の整備
DVに関する法制度をさらに整備し、被害者保護と加害者更生を効果的に進められる環境を整えることが重要です。罰則の強化だけでなく、更生支援プログラムの法的位置づけの明確化なども必要です。
6. 研究の推進
DVの要因や効果的な介入方法について、さらなる研究を進めることが重要です。科学的な知見に基づいた対策を講じることで、より効果的なDV防止と再発防止が可能になります。
まとめ:継続的な努力と社会全体の取り組みの重要性
DVからの回復と再発防止は、決して容易なプロセスではありません。「変われた」と感じても油断は禁物であり、継続的な自己観察と努力が必要です。再発のリスクを認識し、適切な予防策を講じること。そして、万が一再発してしまった場合も、それを新たな学びの機会として捉え、さらなる成長につなげていくこと。これらの姿勢が、真の変化と健全な関係性の構築につながります。
同時に、この問題は個人や家庭の努力だけでは解決できません。社会全体でDVについての理解を深め、予防と支援の体制を整えていくことが重要です。教育、啓発、支援体制の強化、法制度の整備など、多面的なアプローチが必要です。
私たち「ブエナヴィーダ」は、これからもDV・モラハラ加害者の更生支援を通じて、この問題の解決に取り組んでいきます。一人ひとりが「気づき」「学び」「行動する」こと、そして社会全体で協力して取り組むこと。それによって、DVのない、お互いを尊重し合える社会を実現できるはずです。皆さまの理解と協力を心からお願いいたします。
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