みなさん、こんにちは。名古屋市でDV・モラハラ加害者を対象とした更生プログラムサービス「Respect Shift」を提供しています。今回は、若い世代に多く見られる「デートDV」について、その警告サインと対応策をお伝えします。デートDVとは、交際相手からの暴力のことを指します。身体的な暴力だけでなく、精神的、性的、経済的な暴力も含まれます。被害者の多くは、最初は気づかないうちにデートDVの関係に巻き込まれていきます。そのため、早期に警告サインに気づき、適切な対応をとることが重要です。この記事を読んで、自分や身近な人を守るための知識を身につけてください。
デートDVとは:その定義と特徴
デートDVは、交際中のカップルの間で起こるドメスティック・バイオレンス(DV)のことです。結婚していない恋人同士の間で起こるため、「デート」という言葉がついています。しかし、その本質は婚姻関係にあるカップル間のDVと変わりません。
デートDVの定義
デートDVは、以下のように定義されます。「交際相手からの身体的、精神的、性的、経済的な暴力または暴力による支配」この定義から分かるように、デートDVは単なる身体的な暴力だけではありません。言葉による脅しや侮辱、望まない性行為の強要、金銭的な搾取なども含まれるのです。
デートDVの特徴
デートDVには、以下のような特徴があります。・若年層に多い・SNSを利用した監視や束縛が多い・周囲に気づかれにくい・被害者が自覚しにくい・エスカレートしやすい特に、若い世代ではSNSを通じた監視や束縛が多く見られます。これは新しい形のデートDVとして注目されています。また、交際中のカップルは「二人の世界」に閉じこもりがちなため、周囲が気づきにくいという特徴もあります。
デートDVの10の警告サイン:早期発見のために
デートDVは、最初は小さな兆候から始まります。以下に、デートDVの典型的な警告サインを10個紹介します。これらのサインに心当たりがある場合は、要注意です。
1. 過度な嫉妬と独占欲
「誰と会っていた?」「なぜ連絡がつかなかった?」と、頻繁に問い詰められる。異性との交友を厳しく制限される。これらは、相手があなたを独占しようとしている証拠です。健全な関係では、お互いの自由や交友関係を尊重し合います。
2. 行動の監視と制限
携帯電話やSNSのチェックを要求される。GPSで位置情報を常に把握されている。外出先や帰宅時間を細かく報告させられる。これらの行動は、あなたのプライバシーを侵害し、自由を奪おうとするものです。
3. 人格を否定する言動
「お前はバカだ」「何をやってもダメだな」といった言葉で常に否定される。あなたの趣味や好みを馬鹿にする。これらの言動は、あなたの自尊心を傷つけ、精神的に追い詰めようとするものです。
4. 脅迫や威圧
「別れるなら死ぬ」「家族に危害を加える」といった脅迫をする。怒鳴ったり、物を投げたりして威圧する。これらの行動は、あなたを恐怖で支配しようとするものです。
5. 性的な強要
あなたの意思を無視して性行為を強要する。避妊に協力しない。ポルノグラフィーの視聴を強制する。これらは、あなたの性的自由を侵害する行為です。
6. 経済的な搾取や制限
お金を貢がせる、借金を押し付ける。アルバイトを禁止したり、収入を管理したりする。これらは、あなたの経済的自立を妨げ、依存させようとする行為です。
7. 孤立させる行動
友人や家族との付き合いを制限する。「俺(私)以外の人間を信じるな」と言う。これらの行動は、あなたを周囲から孤立させ、支配しやすくしようとするものです。
8. 責任転嫁
自分の暴力的な行動を「お前が悪い」と言って正当化する。問題の原因を全てあなたのせいにする。これは、加害者が自分の行動に責任を取らない典型的なパターンです。
9. 急激な感情の変化
優しかったかと思えば、突然激怒する。謝罪と暴力を繰り返す。これらの行動は、あなたを混乱させ、支配しやすくするための手段です。
10. 自傷行為や自殺をほのめかす
「お前がいなければ生きていけない」と言う。別れを切り出すと自傷行為をする。これらは、あなたに罪悪感を植え付け、関係から逃げられなくするための手段です。
デートDVに気づいたら:緊急時の対応策
これらの警告サインに気づいたら、すぐに行動を起こすことが重要です。以下に、緊急時の対応策をいくつか紹介します。
1. 安全を確保する
まず最優先すべきは、自分の身の安全を確保することです。暴力的な状況から逃げる必要がある場合は、躊躇せずに逃げましょう。信頼できる友人や家族の家に一時的に身を寄せるのも一つの方法です。
2. 証拠を残す
可能であれば、暴力や脅迫の証拠を残しておきましょう。メッセージやメールのスクリーンショット、暴力の痕跡の写真などが有効です。これらの証拠は、後に警察や裁判所で必要になる可能性があります。
3. 信頼できる人に相談する
一人で抱え込まず、信頼できる人に相談しましょう。友人、家族、学校の先生、カウンセラーなど、誰でも構いません。話すことで、客観的な視点を得られ、適切な対応策を見つけやすくなります。
4. 専門機関に相談する
デートDVの専門相談窓口や、警察の相談窓口を利用しましょう。これらの機関では、専門的なアドバイスや具体的な支援を受けることができます。名古屋市内にも、いくつかの相談窓口があります。
5. 関係を断つ決意をする
デートDVの関係を改善することは、非常に困難です。多くの場合、関係を完全に断つことが最善の解決策となります。別れを告げる際は、安全に十分注意しましょう。可能であれば、第三者の立ち会いのもとで行うことをおすすめします。
デートDVからの回復:心のケアと再発防止
デートDVの関係から抜け出した後も、心のケアと再発防止が重要です。以下に、回復のためのステップを紹介します。
1. 専門家のサポートを受ける
カウンセリングや心理療法を受けることをおすすめします。トラウマケアの専門家に相談することで、心の傷を癒し、自尊心を取り戻すことができます。
2. 自己肯定感を高める
自分を大切にする習慣を身につけましょう。趣味や学習など、自己実現につながる活動に取り組むことも効果的です。
3. 健全な人間関係を築く
信頼できる友人や家族との関係を大切にしましょう。新しい出会いにも積極的になりましょう。ただし、恋愛関係に入る際は慎重に進めることが大切です。
4. 境界線の設定を学ぶ
自分の気持ちや意思を適切に表現する方法を学びましょう。「ノー」と言える勇気を持つことも大切です。
5. 警戒心を持ち続ける
デートDVの経験を踏まえ、新しい関係でも警戒心を持ち続けることが大切です。先ほど紹介した警告サインに注意を払い、早期に問題を発見できるようにしましょう。
まとめ:デートDVのない社会を目指して
デートDVは、若い世代の間で深刻な問題となっています。しかし、正しい知識と適切な対応があれば、この問題から自分を守ることができます。この記事で紹介した10の警告サインを覚えておき、少しでも心当たりがあれば、すぐに行動を起こしてください。そして、周りの人にも関心を持ち、デートDVの兆候に気づいたら、適切な支援をしてあげてください。デートDVのない社会を実現するためには、一人ひとりの意識と行動が重要です。私たちは、これからもDV・モラハラ加害者の更生支援を通じて、この問題の解決に取り組んでいきます。皆さまも、ぜひこの問題に関心を持ち、できることから行動を起こしていただければ幸いです。健全で幸せな恋愛関係を築くために、この記事の内容を活かしてください。あなたには、暴力のない、幸せな関係を築く権利があるのです。
この記事の著者:
主催者 S.Y
DV加害更生プログラムのプロフェッショナルとして活動している主催者。DVに関する法律、行政の施策について弁護士、自治体等と積極的に情報交換をしている。